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zoom RSS 身代わり伯爵シリーズ二次創作38

<<   作成日時 : 2012/05/27 13:39   >>

面白い ブログ気持玉 38 / トラックバック 0 / コメント 0

【注意】若干BLっぽい描写がありますので、苦手な方はご注意ください!
ご無沙汰しております。桔梗さまに2010年1月に「アンジェリカ話」でリクエストをいただいておりまして、ものすごく、ものすごく遅くなったのですが、やっと書き終わりましたので、アップさせていただきます。
桔梗様、大変申し訳ございませんでした!アンニュイなアン話は挫折しました。そして・・・いまさらですが、もしかしてこれアン話じゃな…いか・・・・・も…です。




『under the rose』



正統な主が戻り、この城には活気が戻ってきていた。けれどもそれは昼間の話で、夜も更けた今、辺りはしんと寝静まっている。
コツリコツリと、あえてゆっくり歩くフレッドの足音は暗い宮城の天井に反射して響き、そのあとからフレッドとは別の、規則正しい足音が続く。

でもねぇ雰囲気は刺々しいよなあ、とフレッドは思い、にやりと口元を緩めた。
そろそろ意地悪もやめてあげよう。正確にはいじめているつもりはなくて愛情表現なのだが、相手にとっては必ずしもそうではないことくらいは百も承知だ。

フレッドは人目を避けるように、建物の裏手に回った。後ろから、素直に後を追いかけてくる足音がする。いい子だなと思う。自分より年上だが、そう思わせる何かがある。
振り向いて、壁に寄り掛かり、ようやくフレッドは追手に声をかけた。
「やあ、ユーシス。こんな素敵な夜に逢うなんて奇遇だね。僕に何か用かい?それとも誰かと逢瀬?」
「何か用、ではないでありますよ……。こんな夜更けに、伴も連れずに外出なんて不用心にもほどがあります」
苦りきった表情で、年上の真面目な部下がフレッドを見下ろす。
部屋を出てすぐについてきていることに気付いたし、ユーシスにも隠れるつもりはなかったのだが、フレッドはあえて振り向かず進み、気付いているはずなのに無視をする上官を、そうなるとユーシスも若干むっとしつつ追うことになったわけだ。
「この間みたいに、僕がいなくなるからかい?」
ユーシスの不機嫌の原因を、フレッドは的確に声にして抛った。突かれたように表情を強ばらせたユーシスは、しかし一つ息を吸うと、キッと上官を見つめた。
「……はい。そうであります」
「ごめんね。迷惑かけて。その結果ミレーユにも君たちにも大変な思いをさせちゃった」
ユーシスが、眼鏡の奥の目を見開く。
「そんなことじゃありません!」
分かってて焚き付けたフレッドが驚くほどの大声で、ユーシスは上官の言葉を遮った。
ユーシスは、真面目で実直で職分を侵すことがない、とてもまっとうな常識人だ。だから、普段はフレッドの発言をこんなふうに乱暴に断ち切ることなんて、絶対にないのだ。
フレッドが何か言うより先に、部下は勢いそのままにドンと壁に拳を叩きつけた。次いで、もう片方の手を壁に当て、両腕で上官を壁と自分の間に閉じ込める。
「ユーシス」
「迷惑だとか、大変だったとか、そういうことじゃありません!ただ、心配だったのです!貴方がいなくて、自分は、どうにかなりそうでした。職務を忘れて、放棄して、貴方を探しに行きたかった」
それでも、ユーシスは行かなかったのだけれど。胸の中に荒れ狂う嵐を飼い殺しながら、きっとフレッドが望むように、彼の妹を支えた。
この上官が本当はすごく真摯に仕事をしているのを知っているから、行けなかった。でも。
「もうそんな思いをするのは嫌であります。勝手にどこかに行くのはやめてください。自分を、いえ、誰かを連れていってください」
ユーシスの思いを浴びながら、フレッドはじわじわと笑いたくなってきた。でもまだもう少し。ユーシスは僕に意地悪ばかりをさせる。
「本当に、君は僕想いだね。君みたいな部下を持ったら、どんな上司も幸せだ。ねえユーシス。君の腕なら、どこでだって活躍できる…」
フレッドはにこりと笑う。天使のように無邪気な笑顔だ。ユーシスは至近距離で見つめて、思わず見惚れる。けれども、案の定、囁かれるのは甘い毒だ。
「僕のところから、離れてみる?」
ユーシスは目を見開く。それは、フレッドからの……

***

「ミレーユ?何を読んでいるんですか?」
「うひゃあ!」
集中して文字を目で追っていたミレーユは、リヒャルトの声が耳元でしたことに驚いて肩を跳ねさせた。
その様を楽しげに目を細めて見つめた婚約者は、次いでミレーユの手元に目を落とす。その表情が、徐々に怪訝そうになっていくのを、ミレーユも不思議に思いながら見つめた。
「あの、ミレーユ。これ、もしかしてアンの作品ですか?」
ややあって、問う彼に、ミレーユは頷いた。
「ええ!アンって物語を書くのが好きなんですって!だから何か読ませてほしいって頼んだら、今は手元にこれしかないのですがって、貸してくれたの。登場人物がフレッドとユーシスだってことにはじめはびっくりしたんだけど……」
ミレーユの説明の途中で、リヒャルトはさっとミレーユの手から冊子を取り上げた。
「ミレーユ、これはもう読んではいけません」
「えっ、どうして?あたし、騎士の忠誠心とか絆とか、まだよくわからないから、勉強にもなると思うんだけど……」
「どうしてもです」
「ちょっ、なんでよ、それじゃ分からないわ!」
リヒャルトによって頭上に掲げられた冊子に、ミレーユが手を伸ばす。取り返そうと躍起になっているうちに、いつしか長椅子の上で、ミレーユはリヒャルトの上に覆いかぶさるような体勢になっていた。その腰と背に、リヒャルトの手が回り、ぎゅっと抱き寄せられる。
「あら、若君。すみません、いらしていたのですね」
そこへ入ってきて侘びの言葉を口にしたアンが、さっとサイドテーブルのお茶やカップを、二人から離れたところに移動する。
人に見られて恥ずかしくなったミレーユが離れて行こうとするのを、腕に力を込めて妨害したリヒャルトは動じたふうもなく苦言を呈する。
「アン、ミレーユにこういうのは……」
「あら、見つかってしまいましたのね。でもこれは主従の関係を書いたもので、若君の心配なさることはありませんわよ〜? 多分ですけど」
差し出された冊子を受け取ってから、別の帳面を取りだして二人の様子をなにやら書き付け始めたアンは、すぐにロジオンに連行されていく。
「ああっ、もう、なんで返しちゃうの?すごく続きが気になるじゃない!あのセリフはどういう意味を持っていたのか、あれじゃわかんないのに……!」
「いや、あの。まあ、なんというか。でも。……そんなに、楽しかったですか?」
「え、うん。なんでそんな顔をするの?」
「いや、俺は狭量だなと思って。あなたは読書する俺を見るのが好きって言ってくれるのに、俺は、俺じゃない何かを見ているあなたは、嫌だと思ってしまうんです」
「え」
ぶわりと赤くなるミレーユをぎゅっとだきしめた大公殿下は、図らずも許嫁の追及を逃れることに成功したのだった。

(終)

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