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zoom RSS 伯爵と妖精二次 珠に瑕

<<   作成日時 : 2013/04/06 21:43  

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大変ご無沙汰しております!
伯爵と妖精、完結巻読みました。好きな作品が終わってしまうのは寂しいですが、ハッピーエンドで幸せでした。
そんなわけで今回は、すごく久々に伯爵と妖精二次です。作品完結後捏造なので、嫌な予感がする方は、どうぞ引き返してくださいませ……!



【珠に瑕】


イブラゼル伯爵といえば、シルヴァンフォード公爵家の嫡男だ。爵位は正式には継いでいなくても、貴族の長男は父親が持つ二番目に高い爵位で呼ばれるのだ。
父親譲りの端正な顔立ちは、まだ少年らしい柔らかさを含んで甘やかで、薄い金色の髪は月光を紡いだよう、淡い青の瞳は春の空を映したようで、まさに神に愛されて生まれてきたのだろう。
性格は母親に似て真面目で優しく、父親から他者を導く者としての教育を受けているので、15を迎える頃には執事が涙ぐんで喜ぶほど、立派な跡継ぎとして成長していた。
そんな彼に問題があるとしたら、ひとつしかないだろう。

エドガー・アシェンバートがアルヴィンの父、母はリディアだ。
生まれる前の記憶はアルヴィンにはないけれど、10歳になったときに、話は聞いて知っている。自分のしたことに驚きもしたが、自分に受け止める力があると信じて話してくれたのがまず嬉しかったし、小さい頃からしていた腕輪が、ますますいとしくなった。


「アルヴィン?」
庭に出ると、キャラメル色の長い髪をさらりと揺らして母が振り返る。彼女の毛先で遊ぶ妖精が、彼の近づいてくるのを知らせたものだろう。
彼女は腕に花を抱えていて、アルヴィンはそれを受け取った。ありがとうと母が笑む。アルヴィンはそれだけでふわりと気持ちが温かくなるのだ。
「はい、母上。母上がいらっしゃるのが窓から見えたので。これは部屋に活けるのですか?」
「ええ。エドガーとあなたの部屋にね。あなたたち、結構根を詰めて仕事や勉強をするでしょう?少しでも気持ちが明るくなるものをと思ったの」
「ありがとうございます…。父上と母上に恥じないようにと思ったら、つい熱が入ってしまって……」
母の優しさに口許がつい緩む。
本当は父のように洗練された、遊び心溢れる物腰も身につけたいのだが、それにも教養が足りていない気がして。
「無理はしてはだめよ。あなたは思い詰めるところがあるわ」
「あ、それは母上に似たんだって父上が」
「まあ。違うわ、エドガーによ」
リディアはくすくす笑う。自分を見上げる母の瞳に愛情が溢れていて、アルヴィンはとろけそうに幸せだ。
笑み崩れるアルヴィンの耳元で、妖精が父の訪れを知らせてくれる。母と息子は同時に振り向いた。
「父上!」
「エドガー、おかえりなさい」
「ただいま。二人でデートなんてずるいじゃないか」
帽子とステッキをレイヴンに預けたエドガーは、まずリディアを抱き寄せて額にキスをし、次いでアルヴィンの肩を抱いた。子供のころのように抱き締めてくれないのに一抹の寂しさはあれど、大人として扱われるのは誇らしくて、アルヴィンは複雑に幸福だ。
「今日はいい日です。母上と父上と一緒に過ごせて。あの、父上、あとでこのまえの課題をチェックしてください」
アルヴィンはエドガーから時折、領地の財政管理についての課題を出してもらっている。忙しい父との時間を有意義に過ごしたくて、アルヴィンは熱心に取り組んでいる。
「ああ、もう終わったのか。いいよ。夕食前に部屋に来なさい」
頬を上気させ自分を見上げる息子に、厳格に接しようと思っても、愛が強すぎてエドガーも微笑まずにはいられない。
それでも、言うべきことは言わねばならないと、エドガーは表情を引き締めた。
「そういえばアルヴィン。最近あまり他家と交流していないようだけど?」
貴族にとって社交は不可欠だ。まだ大人ではなくても、基盤を作っておくのは大切なことで、それを疎かにしているのではないかと父は息子に釘を刺す。
アルヴィンはぎくりとした。素直に項垂れる。
「申し訳ありません……。母上と父上となるべくたくさん過ごしたくて……」
「それは僕だってそうだ。それでも家族を守るためにやるべきことがあるだろう?」
「……! はい!父上のように立派な紳士になります。では、効率よく社交を切り上げ、家族とたくさんの時間を過ごす方法を常に考えて立ち回れるようにします!」
「ああ。お前は賢いからできるよ」
「はいっ」
元気よく返事をする息子と、慈愛に満ちた眼差しでそれを見つめる夫を見ながら、ふとリディアは思うのだ。
「アルヴィンは私たちを好きすぎじゃないかしら……」
それでも、いつか大事なひとができたらきっと、そのひとを大切にするのだろう。そういう子にそだってくれているはずだ。
そう思い直して、リディアは二人をお茶に誘う。三人で手を繋ぎあって、微笑みながらゆっくり歩く。

アルヴィン・アシェンバートに一点の瑕があるとすればそれは、彼が両親を愛しすぎていて他が見えないところだが、それは美点の裏返しでもあるのだろう。
彼の小指の赤い糸はまだ、彼の運命のひとには辿り着いていないけれど、いずれはきっと彼の父親のように誰かを愛して、そのひとと共に、はるか彼方のトネリコの地を守る絆を、紡いでいくのだ。


(終)



伯爵と妖精、完結おめでとうございます!
はまってから6年、ずっとずっと大好きな物語でした!これからもずっと大切な物語です。

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Roy
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2017/03/12 12:36

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